2019年12月27日(金)
犬の病気(腫瘍:表皮向性T細胞性リンパ腫)
「背中、顔周りの皮膚炎がなかなか治らなくて。」と2匹の白い雑種のワンちゃんが受診しました。かゆみが強く、唇も赤くなっています。
実は、1ヶ月違いで、この子たちは、来院されました。1匹の子は他院でアレルギー性皮膚炎の診断で治療し、片方の子は皮膚炎がすぐ治ると思って経過を見ていたとのことです。
背中、顔のびらん、潰瘍の皮膚病変を確認し、その部位の細胞診をすぐ行ないました。
すると、、、
大型独立円形細胞を診察中、顕微鏡検査で多数確認しました。炎症細胞は少ないです。
この時点で、皮膚病変は、アレルギーとかの皮膚炎ではなく、血液由来の腫瘍、リンパ腫が最も疑えました。
確定診断のために、組織検査を行いました。
表皮向性T細胞性リンパ腫という結果でした。
これは、犬に見られる悪性リンパ腫の1種で、慢性皮膚炎に似たような落屑、潰瘍、色素沈着を、皮膚、粘膜(口腔、肛門等)、粘膜皮膚境目に発症します。初めは、皮膚病変から始まり、病期後半は腹部臓器、リンパ節への転移など、広範囲にわたり、病変が拡大、進行する病気です。他のリンパ腫に準じた治療で、現在3種の抗がん剤を使い、1匹は完全寛解、1匹は部分寛解で、痒みも少なくなりました。
以前、載せたダックスさんも頑張りましたが、現在は亡くなっています。かぎりある病気ですが、質の良い生活が送れてもらえるよう、今後も見守っていきます。
痒みがなくなって楽になったそうです。良かったです。
以前も掲載しましたが、皮膚病と診断して治療していくと、大変なことになりますよ。
グーグル検索で、診断した病名の症状を確認して安心していて、実は別の病気であったという患者さんが近年増えています。
あるネコちゃんが、肝リピドーシスと診断されて、食道カテーテルが抜けたと来院された患者さんがいました。事情をお聞きすると、肝リピドーシスとは思われない経過でしたが、飼い主さんは、グーグル検索の結果で症状があてはまるのでリピドーシスを信じていました。念のため、腹部超音波検査を行いました。肝臓全体が、炎症ではなく、腫瘍の進行を思わせる所見があったので、病理検査を行いました。結果はカルチノイド神経内分泌癌という悪性腫瘍でした。どちらも、黄疸、嘔吐、食欲不振があります。この1か月でもそういうケースが5~10件ぐらいありました。
私たち医療関係者は症状をみて、病名を診断します。患者さんがグーグル検索で、病名から、自分の子と同じ症状を確認して、診断結果を納得される方が増えています。病名が違っても上に書いたネコちゃんのように、上のワンちゃんのように、同じ症状の病気は多数存在するので、病気の不安があった場合は、やはり、ご自分で病院を選んで、セカンドオピニオンをお勧め致します。
次回、別のタイプのリンパ腫3匹の子を紹介します。
その次は泌尿器疾患、自己免疫疾患が続きます。
皮膚疾患、消化器疾患も随時載せていきます。