2020年4月30日(木)
犬、猫の病気(腫瘍:少数派の リンパ腫症例)
今回は典型的なリンパ腫(例えば、多中心、消化管型、縦郭型等々)ではなく、少し少数派のリンパ腫3例を紹介致します。他には、肛門嚢に、指先爪根元に、瞼に、膵臓、肝臓に発生と、いろんなタイプがあります。
数か月前 から、舌にしこりを確認して心配で受診されたチワワさんです。
口を開けると微かに舌奥に5mmの腫瘤(上写真)を確認できました。麻酔下で組織を採取して病理検査をおこないましたところ、リンパ腫(脾臓に発生する緩徐進行型の低悪性度リンパ腫と同様の所見)と診断でした。ほぼ進行が認められない場合が多いのですが、しこりの数が増えているので補助的に化学療法を行っています。元気で、無症状です。
にゃんちゃんの左目の上が3日前から急に腫れているとのことで来院されました。完全室内の1匹飼いなので、外傷ではありません。腫れている部位の細胞診を院内で行いました。上のチワワさんの細胞に似た独立円形細胞が採取されました。 節外型リンパ腫と診断してリンパ腫に効くL-アスパラキナーゼという注射をして数日で腫れは退きました。
猫の突然の鼻の腫れ、鼻炎症状は比較的リンパ腫が多いです。このタイプのネコのリンパ腫は経過がいいので、数回同じ注射をして再発は認められません。
最後に、この子は半年前から最初は膿性鼻水、徐々に左斜頸、ここ最近は眼球振盪(揺れ)があり、両目とも瞳孔が広がって対光反射がなく、脳神経異常所見が認められました。食欲はありません。複数病院への通院、経過が長く、診断治療がうまくいかず、他院で2次診療施設でのMRI検査を勧められましたが、これまでの検査代、薬代の負担での相談と、病気診断の為、当院に受診されました。
おばあちゃんから問診を行うと、2つの症状でリンパ腫も可能性も検討したほうがいいと思われました。まず、費用とすぐ診断する為に、鼻から直接細胞を採取して顕微鏡で院内検査を致しました(細胞診2000円)。
独立円形細胞、大型のリンパ芽球が顕微鏡で多数散見され、リンパ腫(大型リンパ芽球が多いので高悪性度のリンパ腫の可能性)と診断し、初診日にL-アスパラキナーゼというリンパ腫のみ効果がある抗がん剤を注射しました。3日で食欲が出て、眼振、斜頸も改善ありましたが、神経症状が出て数か月経過している為に、後遺症は残りました。初診時は起立困難でしたが、1カ月で、自力で起立は可能となりました。化学療法を3ヶ月続けてましたが、その後亡くなりました。
リンパ腫の治療で、症状が出てから診断治療開始までの期間が長い場合、この子みたいに抗がん剤が効いて良好でいられる時間が短くなる場合もあります。リンパ腫の診断治療開始までが早いと、治療が効いて症状が無い期間が長くなるので、リンパ腫の診断は時間との勝負です。