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犬、猫の病気(泌尿器;腎不全)

血液検査のみで、「腎不全」と診断して、

「腎不全の治療を行う=点滴、腎臓食、腎不全の治療薬を服用する」ということは、全ての腎不全の患者さんに適用ではない場合が多いです。

血液検査で腎臓の数字が高く、ペットの状態が悪いからと言って、助からないとは限りません。

また、腎不全の治療に点滴だけとか、食事だけとかは対症療法で、原因に対しての治療ではない場合もあります。

実は、腎不全は

①腎前性(血液の巡りが悪い)

②腎性 (腎臓の働きが悪い)

③腎後性(尿の排出経路が悪い)

の大まかに3つに分類されます。各種、治療法も異なります。

その為、血液検査以外の検査(尿検査、画像(レントゲン.超音波.尿路造影)、生検等)も一緒に行って診断します。

 

 

 

『③腎後性腎不全』は、

腎臓以降の尿路{ ⇒ 尿管(青)⇒ 膀胱(赤)⇒ 尿道(緑) }に障害が起こり、尿排出ができなくて起こります。

今回は『③腎後性腎不全』の症例をいくつかご紹介いたします。

 

【緑(膀胱~出口)の障害】

いこちゃんは、排尿なく、よだれが大量に出て、呼吸が荒く、横になったままで来院しました。

完全に尿が出ている様子が無く、尿道から、尿を出すよう処置を試みましたが、いこちゃん自身がペニスの先端を舐めて尿道が損傷して、カテーテルが挿入できませんでした。

検査中に呼吸が停止して、呼吸の補助に気管キューブで気道を確保し、その後心電図を装着して、重度の不整脈(期外収縮~心室細動、心停止)を確認しました。排尿障害から、急性腎不全(BUN>140.0 CRE>23.0)高カリウム血症(>12.0)で、心臓の伝導異常をおこしていました。

急速静脈点滴、重炭酸Na(メイロン)、ブドウ糖-インシュリン、利尿剤、カルシウム製剤を注射して高カリウム血症の治療を行いました。尿道が損傷して完全閉塞していた為、一時的に腹壁から膀胱に直接排尿できるようカテーテルを留置し、数時間後にはカリウム値も6.8(正常は5.0前後)まで改善し意識も回復しました。

その翌日、尿道狭窄部位まで尿道を摘出して、出口を女の子のような形にする手術(下の白 〇)(会陰尿道造瘻術)を行い、排尿も通常通りできるようになり、腎不全も改善しました。

いこちゃんのケースはよく見かける尿道閉塞の腎不全です。

7年後の現在も正常に排尿できて、順調です。現在は便秘で定期健診で受診中です。

 

 

【赤(膀胱)の障害】

ねねちゃんは、腰仙椎狭窄症(馬尾症候群)という脊椎神経が圧迫されて、後ろ足のふらつき、腰痛、排尿障害がおこる疾患です。下の図の黄色〇の部位の骨の継ぎ目のずれ、圧迫が仙髄、それよりも末梢領域の神経障害がおこり、膀胱排尿筋が弛緩して、自力での排尿がなかなかできなくなります。長期間続くと、腎臓に負担がかかって、腎不全も起こす場合もあります。

 

ねねちゃんも、腰仙椎狭窄症を長年患って、膀胱が伸びきって排尿がなかなかできず、中度の腎不全を患っていたので、排尿筋の緊張を高める薬(副交感神経作動薬)で排尿を促す治療を行っています。

 

 

【青(尿管)の障害】

あおちゃんは、嘔吐、食欲不振、活力低下で来院しました。その時、排尿は正常にありました。

腹部レントゲン検査で、腎臓、尿管結石(下図の白〇)4個を確認、腹部超音波検査で、左尿管結石と腎盂拡張を確認しました。血液検査は、BUN 119.8  CRE4.92と腎機能が悪くなっていました。

左尿管結石閉塞での急性腎不全と診断し、結石除去手術を行いました。術後腎不全も改善しました。(BUN 43.4  CRE 2.14)

現在は、状態も改善して元気に過ごしています。

 

 

【青(尿管)の障害】

メルちゃん2歳のネコちゃんです。

この子も左尿管結石が閉塞して急性腎不全を起こしていた子です。

尿管切開手術で結石除去を行いました。

尿管が途中で狭窄している場合は、尿管膀胱吻合術を行う場合があります。

http://www.harue-vet.com/news/?p=1090

尿管結石摘出手術動画

①尿管切開IMG-4728 4

②尿管結石摘出IMG-4728 2 (1)

③尿管縫合IMG-4729 4 (1)

*後腹膜の縫合に訂正いたします。

現在は腎不全も改善して元気に過ごしています。

 

病期が遅い場合は助からない場合もありますが、改善する努力をすれば、生きられる可能性が十分ある腎不全です。

ただ、知っていただきたいのは、腎不全は血液検査だけでは、原因を判断できず、適切な治療ができない病気だということです。

次回、腎性腎不全を紹介いたします。