2022年10月24日(月)
猫の縦隔型リンパ腫(診断~治療まで)
5才の去勢済みの雄のネコちゃんです。
最近、息遣いが荒く、食欲が無く、痩せてきたとのことで来院されました。肩を上下に大きく動かし、努力性呼吸をしていたので、来院後順番を優先して診察しました。診察、検査は静脈点滴を行い、酸素チューブを鼻先に近づけ、呼吸循環状態の安定を図って行いました。
血液検査はFIV陰性、Felv陰性、WBC増加、生化学検査正常でした。
レントゲン検査では、胸水、気胸、縦郭部腫瘤を確認し、超音波検査で心臓の頭側腫瘤(=レントゲン検査の縦隔部腫瘤)、胸水を確認しました。超音波ガイド下で胸水60mlを抜去して、すぐ酸素室で預かりました。
胸水は褐色で細胞成分を多く含んでいました。
胸水の細胞診をすぐ院内で行いました。
注)胸水、腹水は、院内で細胞診を行うので、迅速診断可能+料金が安価で済むという利点があります。胸水、腹水の細胞診の外注検査は時間+費用が掛かるので、当院では実施しておりません。
その胸水の細胞成分に少数の炎症細胞、中程度の赤血球も含まれていましたが、大型独立円形細胞(リンパ芽球)が多数散見されました。
「縦隔型リンパ腫」と診断して、効果のある抗がん剤注射を十分な点滴後(腫瘍溶解症候群対策)に行い、リンパ腫の治療を初診日に開始しました。
少しずつ呼吸が楽になり、食欲が出て、6日目には酸素室から出られるようになりました。
初診日に抗がん剤を投与してから胸水が減っているので、胸水の抜去処置は初診日の1度しか行っておりません。
その後、一般状態が改善し、部分寛解したので、抗がん剤の維持療法を行っています。
早期に治療する(Felv陽性は経過がよくない場合も)と、 1年以上(長い子は現在4年治療している子も)寛解している子もいます。数日~週間経過していた子は経過がよくない場合もあります。
縦隔型リンパ腫は、1日でも早い診断、治療が必要な病気です。