2018年3月9日(金)
ネコの病気(免疫:重症筋無力症の1例)
重症筋無力症って、知っていますか?

帰宅したら横になって立てない状態でした。と、話されて、このニャンコちゃんの飼い主さんは受診されました。
身体検査で、起立困難、ヨダレ、全身脱力で、頭も机から落ちてしまいそうになるぐらいでした。血液検査で異常無し、超音波検査で、膵炎と膀胱腎結石、肥大型心筋症を確認しましたが、それが原因ではなさそうです。全身が脱力していて、横になったままで、頭すら支えられません。次の日、肺炎になり、状態が悪化して酸素室に入りました。肺炎を治療して改善した入院4日目にテンシロンテストを行いました。
テンシロンテストとは?下の注射を投与して重症筋無力症を診断する検査の一つです。
重症筋無力症とは?
アセチルコリン受容体を自己免疫が破壊して、いろんな症状を起こす病気です。
アセチルコリン受容体は、前身の神経、筋肉の境目にあるもので、これが壊されると、神経から、筋肉に刺激が少なくなるので、筋肉の動く力が弱くなります。
局所型、全身型、劇症型とありますが、このニャンコさんは、症状から、劇症型が疑えました。抗体検査で、検査する方法がありますが、検査結果が出るまで2週間近くかかります。状態が悪く、進行が早いので、すぐ判定できるテンシロンテストをおこないました。
注射後、支えると、ほんの少し顔をあげていられるようになりました。
14日後ぐらいで、後ろ足はおぼつきませんが、自力で上半身をおこして、前足で歩行可能に。
注射後、筋肉の反応があり、起立はできませんが、上半身と四肢を少し動かしました。重症筋無力症と判断して、シクロスポリン、プレドニゾロンなどの免疫抑制剤を始めました。始めて3日目から、顔を上げれるようになり、10日目で、前肢は動かせるようになり、1ヶ月後の現在では、ふらつきながら、歩行可能になりました。この子は幸い免疫抑制に反応して状態が改善していますが、経過を見て、場合によっては、ビリドスチグミンを用いてアセチルコリン分解酵素を抑制していく治療も同時に行うこともあります。
1か月前の大雪の時に飼い主さんは、せっせと、面会にいらっしゃっていました。ねこちゃんの様子がずっと悪く、ねこちゃんの様子をうかがって、不安をかかえてらっしゃったみたいですが、現在はねこちゃんが回復されてお姉さんのお顔が晴れ晴れとされてよかったと、実感しました。